製造現場においてキズや汚れ、異物混入などの瑕疵がないか製造物をチェックする「外観検査」ですが、ヒューマンエラー防止の観点から自動化することが望ましいという一面もあります。「見逃し」を避けるためにも可能な限り自動化を進めたいところではありますが、実際場面を想定した時にどのような課題・難しさがあるでしょうか。ここでは具体的な理由を挙げながら解説していきます。
一般的に検査機器というものは、汎用性を重視して製造されています。そのため、自社が製造している製品の検査を想定すると、製品の仕様などに合わせたカスタマイズが必要になることがほとんどでしょう。2016年にちゅうごく産業創造センターが中国地方で行った「ものづくり企業の生産現場における検査の自動化促進可能性調査(*1)」によると、検査の自動化を実施している企業の44.2%は、メーカーのオプションを超えるカスタマイズを実施、またはオリジナルの装置を開発したと回答しています。導入企業においては「検査精度を上げたい」「検査スピードを上昇させたい」「検査対象への融通性」といった改善要望点も出ており、カスタマイズの重要性が窺えます。
(*1)
外観検査の自動化には、機器の現地導入や動作を記憶させるためのティーチングという業務が必要になり、これを行う「ティーチングマン」の存在が欠かせません。そのため、自社のスタッフをティーチングマンに育成するか外部から招き入れる必要があり、この人材確保も課題の一つとなるでしょう。しかしながらティーチングマンの育成には数年はかかると言われているうえに、近年さまざまな業界で自動化が進んでいることもありティーチングマン不足が問題になっています。そのため希望した時期に人材確保ができなかったり、膨大なコストが必要になってしまうこともあるのです。
高い品質を保つために検査の品目や項目は日々多様化しており、部品ごとの管理など細かな管理も必要になっています。また、新たな品質基準が設けられることもあるでしょう。そのため詳細なカスタマイズや設定が必要となる検査機器では、それ1台に多種多様な製品の検査を任せることが難しいため、多品種少量生産を行っている工場などにおいては自動化が難しいと言われています。実際、前述した調査結果によると検査の自動化が進まない理由に「多品種少量生産・変種変量が多い」と挙げる企業も多く、検査機器導入におけるもっとも大きな課題と認識されています。
本来であれば人間よりも正確性が高く優秀なはずの機械ですが、人間のように融通が利かないため例外的な検査対象の指定や検査項目の決定など、臨機応変な対応が難しくなってしまいます。そのため検査は100%自動化するのではなく、検査機器の導入後もマンパワーと併用という形を取る現場も少なくありません。実際、自動化のみを採用している現場はほぼないに等しく、人による検査と人・自動検査の併用が半々くらいとも言われています。
AI外観検査では画像処理システムとディープラーニング技術を組み合わせることで、製品の外観異常を高精度かつ柔軟に検知します。膨大な画像データを学習し、異常パターンの特徴を自動的に抽出するAI技術により、従来のルールベース検査では困難であった微細な異常の検知や、検査精度の向上、検査員の負担軽減を実現します。
外観検査の自動化にはさまざまな課題があることが分かりましたが、導入するためにはどのようなポイントを抑えていればよいでしょうか。この抑えるべきポイントを外さず導入することで、導入効果を最大限に発揮することが期待できるでしょう。
「不良品が多くなりクレームが増えている」「時間がかかって生産量が伸びない」など、自動検査の導入検討には課題があるはずです。この課題をまずはしっかりと現場優先で調査・整理し、その解決手段として自動化を検討してみるのがよいでしょう。場合によっては自動化で解決できない課題かもしれません。正しく要因分析を行い、自動化の効果を最大限得られるように検討を深めましょう。
自動化を行うにあたっては、検査機器をただただ導入するだけでは意味がありません。前述の通り、自社の製品に適合した検査機器・方法を導入しなければ、その効果が得られず課題は解決できないでしょう。そのため自社のワークや検査項目、検査環境などをしっかりと分析し、どのような検査機器が自社に最適なのかをじっくりと検討するようにしましょう。
自社の課題や製品などをしっかりと分析した結果を踏まえ、どの範囲を自動化するかを検討するようにしましょう。一般的に自動化を導入するにあたっては自動化とマンパワーを併用しますので、自社の検査工程においてどこまでを自動化しどこまでを人の手で対応するのかを決定します。製造ラインの改造範囲や連携システム、その後の判定や再検証も含め、十分な時間をかけて対象範囲を決めるようにしましょう。
自動化を行った結果としての投資に対する効果検証は現場が分からなければできません。コンサルやベンダーによる協力を仰ぎながら、目指すゴールを正確にしたうえで自動化後の保守・システム維持といってフェーズも含めたシステム化予算の検討を行い、実行場面においても想定通りの効果が発揮できているかどうかを検証するようにしましょう。
AI外観検査を導入したいものの、具体的な検査手法や導入の手順が分からずに悩んでいる製造業者は少なくありません。初めてAI外観検査を導入する際は、専門知識と豊富な導入実績を持つ企業に相談しましょう。当サイトでは日本国内でAI外観検査を手掛けるSIerやAiベンダー、検査カメラメーカーの特徴や選定ポイントについて詳しく紹介しています。
AI外観検査の中から、初めての導入におすすめのAI外観検査開発会社をピックアップ。
AI外観検査は、製品や開発会社によって自動化できる対応領域が異なります。
ここでは、自動化したい範囲に合わせておすすめの開発会社を紹介しています。
品質の一定化やヒューマンエラーに課題を感じる企業におすすめ。定量化しづらく、思わず人の判断に頼ってしまっている検査項目も丁寧に検証し、細かく定量化したうえでAIに判断させることが可能。
自社固有の要件をしっかりと採り入れて検査ラインを構築できます。
単純作業に人的工数がかかっている企業におすすめ。AIベンダーが保有する既存のAIパッケージに対して、自社の要件に合わせて判断基準をカスタマイズすることで、これまで統一化されていた判断が可能。
誰でも検査が可能であった項目を自動化することができ、オーダーメイドに比べて比較的短期間で導入できます。
検査そのものの工数から削減し、社員の負担を減らしたい企業におすすめ。画像データを基に、定量化した判定が可能。細かなカスタマイズの対応は難しいものの、比較的低価格で導入することができます。
異常判定が出た部品のみ目視で検査するなど、目視と自動化を使い分けて活用することが可能です。
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