自動外観検査を導入するにあたって、まず「精度とはなにか?」を考える必要があります。精度をあらわす指標は、目的によってさまざまですが、機械学習の判別問題における一般的な精度指標としては、学習済みのモデルの性能を示す「Accuracy」や、誤検出を示す「Precision」、さらには見逃しを示す「Recall」などがあります。
また、自動外観検査の精度は、撮影環境や画像の処理といった加工方法によっても改善される場合があります。また、「ラベルの正しさ」についても確認することが必要です。
「ラベルの正しさ」を問うことは、文字通り、その画像に割り振られているラベルの正当性を問うことです。とりわけ、人間が目視で検査して得られた外観検査のラベリングを、そのまま自動学習や評価データに適用する場合、いくつかの原理的な欠点にみまわれることがあります。
例えば、人間が業務時間中にラベリングしたデータには、限られた時間内に業務を行う必要から、ラベルの精査がしっかりと行われることが難しい場合があります。また、その人のコンディションや業務時間によっては、同じ製品でもラベリングの結果が変わってしまう可能性もあります。
同じように、明文化されているラベリングであっても、人によっては基準が異なってきます。人によって異なるラベリング結果を、データとしてそのまま学習・評価させようとすると、なかなか思ったような結果が得られないのです。
こういったラベルの正しさをめぐる問題を解決するため、ラベルやデータの精査を行う必要があります。さらにいえば、ラベルの正しさとは、データに含まれる曖昧さを把握することでもあると言えるでしょう。
ここまで見てきた通り、ラベルの正しさ(データに含まれる曖昧さを把握すること)は、とても難しい課題になります。この点については、自動外観検査のシステム化においては、精度そのものは、参考程度であり重要ではない、という見方もあるでしょう。データが数枚いれかわるだけでも、精度には影響が出てくるもの。また、データのラベリングが完璧に実施されていることは、ほとんどないからです。
自動外観検査の精度の重要性では、例えば、製品の外観にどのような種類がありえるのかを把握したり、検品にあたるスタッフが何を根拠に判別を行っているかを集計したり、また、システムがどのように判別するのかを確認することも大切なポイントになってきます。
スタッフや関係者で、合意をつくり、調整を行うことも欠かせないでしょう。
AI自動外観検査で、判定の精度を高める手段はいくつかあります。使用条件が限られていても工夫できる方法を見てみましょう。
AI自動外観検査で精度を上げるテクニックのひとつに、「データの水増し」があります。これはとりわけ、準備できる画像データが少ない場合に活用できるテクニックです。
手元に準備できる画像データを、回転したり、拡大・縮小したり、変形したり、さらに反転や並行移動といった加工を施したり。このように、手元にある画像データを加工することで何倍にも増やせば、AI自動外観検査の精度を上げることに役立てることができます。
手元に準備できる画像データが少ない場合でも、「他分野で学習した内容を別の領域に役立てる」という学習方法=「転移学習」を活用することができます。まったく異なる画像データを使ってAI自動外観検査が学習した結果を借り、これから精度を高めたい外観検査に転用するのです。
言い換えれば、広く公開されている大量の画像データを活用して、学習したモデルの知識を転移学習することができれば、AI自動外観検査の精度を高めることができる、というわけです。
また、大量の画像データを活用して学習を行なった「学習済みのモデル」そのものが、活用できるデータとして公開されていることもあります。学習済みのモデルそのものを作成するには長い時間と手間がかかりますが、転移学習を活用すれば、短時間のうちに、結果が期待できる学習モデルを作成できる可能性もあるのです。
高性能なAIモデルのデータを所有していても、それを稼働させるために必要なスペックのハードウェアがない場合は、「AIモデルの圧縮」を活用してみましょう。これは、高性能なAIモデルの性能はそのままに、データを小さく圧縮させる技術として知られています。
ただし、通常のデータの圧縮とは異なり、AIモデルの圧縮はそれほど簡単なテクニックではありません。AIモデルの圧縮をイメージするには、教師と生徒の関係がわかりやすい例となります。
圧縮前の「教師モデル」が高性能AIモデルであるのに対し、「生徒モデル」は、さまざまな知識を持っている教師から知識を教わり、同じように問題を解くことができる状態になったAIです。まったく同じデータを有していなくても、より小さなデータで期待される結果を出すことができます。
AI自動外観検査の精度は、画像の撮影方法を改善することによって高められる場合もあります。AIが判定しやすい画像は、人間が見やすい画像と同じとは限りません。AIが製品の良否等の判定を行いやすいように、照明の当て方を工夫したり、フィルターを活用することで、AIに適した画像を撮影することも、精度を上げる方法のひとつになるでしょう。
実際に、AIが判定しやすいように、特殊なフィルターを活用することで、画像データのダイナミックレンジ を高める、といった撮影方法も行われているようです。
AI外観検査の中から、初めての導入におすすめのAI外観検査開発会社をピックアップ。
AI外観検査は、製品や開発会社によって自動化できる対応領域が異なります。
ここでは、自動化したい範囲に合わせておすすめの開発会社を紹介しています。
品質の一定化やヒューマンエラーに課題を感じる企業におすすめ。定量化しづらく、思わず人の判断に頼ってしまっている検査項目も丁寧に検証し、細かく定量化したうえでAIに判断させることが可能。
自社固有の要件をしっかりと採り入れて検査ラインを構築できます。
単純作業に人的工数がかかっている企業におすすめ。AIベンダーが保有する既存のAIパッケージに対して、自社の要件に合わせて判断基準をカスタマイズすることで、これまで統一化されていた判断が可能。
誰でも検査が可能であった項目を自動化することができ、オーダーメイドに比べて比較的短期間で導入できます。
検査そのものの工数から削減し、社員の負担を減らしたい企業におすすめ。画像データを基に、定量化した判定が可能。細かなカスタマイズの対応は難しいものの、比較的低価格で導入することができます。
異常判定が出た部品のみ目視で検査するなど、目視と自動化を使い分けて活用することが可能です。
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・撮像の
サポートがあるか
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